「新年快楽」上海 10/10

― アジアの牽引車 ―

 最後まで偽ブランド売りに付きまとわれたが、豫円商場からは南京東路駅までタクシー(殆んどがフォルクスワーゲン製)で移動。ワンメーターだったが、トランクへの荷物の出し入れは運転手に指図されてセルフサービスだった。昼過ぎには南京東路を最後に地下鉄に潜った。14時には浦東空港に到着し、搭乗チェックを済ませた。出発は20分遅れで17時20分あったが、機内では日本食(とんかつ丼)とオンデマンドムービーでアッと言う間、関西空港には定刻の20時30分到着だった。日本に喧騒は無く、静かな落ち着いた空気を味わいながら一安心。いつものようにMKジャンボハイヤーで90分、慣れ親しんだ自宅に辿り着いた。

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ちょうちん屋


豫円商場のタクシー乗り場


風変わりな三輪タクシーや路面電車(タイヤ駆動)ともお別れ


数分後には最先端のリニアに乗る


4分後に中間地点で最高速度に達する(結構揺れる)


車窓には無数に続く高層アパート

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 上海は新旧混在の街、騒々しく音をたてて肥大化するパワフルな街だ。夜には繁華街が不夜城のように賑わい、これら無数のアパートには帰宅した人々の灯りがともる。古い町並みは豊かではないが力強く生き抜く民衆で溢れる。街のあちこちで取り壊された古い建物の瓦礫から舞い上がる埃とともに、超特急で進化するビル群。数の力でなりふり構わぬように発展し続ける中国の臨海部。10年後に現れる都市の姿とは一体どんな光景なのだろう。

 街では偽ブランド品や偽キャラクターグッズが溢れている。ホテルのフロントとボーイが大声で談笑し、ウエイターはテーブルに腰掛けて鼻歌を歌う。しかし肝心の客には笑顔を見せない。路上では自動車やバイクが歩行者を気にせずクラクションも高らかに走っていく。こんな人々の意識はどのように変化するのだろう。

 改革解放政策の以前には人民の月収が36元だったとのこと。競争社会で富の集積を謳歌する都市にはアジアの牽引車に相応しい豊かな心が集うよう、隣人として願わずにはいられない。昭和30年代のような、いや戦前の町並みかも知れないような空気から平成の成熟した現世の日本へタイムスリップして戻ることができた。中国の健全な発展を祈るフィールドワークの旅は、いつもになく妙に安堵感のある帰国で幕を閉じた。

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