学会へ行こう

私は2000年10月14・15日に仙台の青葉山に位置する宮城教育大学で行われた日本音楽教育学会第31回大会に参加して参りました。宮城教育大学の伝統音楽教育実践に感動した学会でした。私の口述発表資料とともに、脈々と営まれてきた東北の音楽教育に対する熱い思いが、どんな地域性に支えられてきたのかを探るべく、京都教育大学大学院生による仙台フィールドワークもご覧ください。これを機会に垣内ゼミ(垣内教授による大学院の伝統音楽講座)では10月から斎太郎節の実践的演習が始まりました。とにかく収穫が大きかった分、疲労も大きかったというのが正直な感想です。

宮城教育大学前の京都教育大学大学院1回生、私は左端。


口述発表要旨(学会誌掲載)

学校吹奏楽の発展に至る経過と課題

-歴史的背景の分析から-

京都教育大学大学院 瀬 浩明

 明治以来今日まで学校吹奏楽が果たしてきた役割は、音楽教育の分野に留まらず学校行事や文化的行事などの特別活動分野、地域との連携を基盤にした総合学習分野など、多面的な分野において認められる。明治初期に西洋文化と共に伝えられた吹奏楽は、学校教育に取り入れられ、戦後の吹奏楽連盟のコンクール開催による技術面の向上、楽器や楽譜・指導者などの条件の充実さらに、国民体育大会をはじめとするスポーツ行事の演奏担当により、吹奏楽活動の条件整備が進んだ。しかし、その活動は音楽を媒体とする活動であるにも関わらず、真に音楽教育の目的達成の一助となり得えなかった。それどころか、「音楽嫌いの生徒を作ってしまう活動」と言われ、学校吹奏楽活動が低く評価されている。

 我が国では多くの場合アメリカに見られる、授業として取り組まれる形態ではなく、クラブ活動などの課外活動に位置づけられて教育が行われてきた。加えて、平成14年度から施行される学習指導要領の改訂で、音楽を含む教育課程が見直され精選される状況を考えると、今後我が国で正課の授業に吹奏楽が取り入れられる可能性は、極めて低いと考えられる。また、生涯教育を推進する方向性から考えても、学校のクラブ活動や社会教育活動での取り組みが、吹奏楽の主な活動フィールドとなることは容易に予測できる。

 現在、学校現場では小・中・高等学校を問わず、年間の校内行事で吹奏楽が活躍する場面が数多くある。それは入学式や卒業式などの式典、体育大会や運動会、学習発表会や文化祭などの諸行事、その他、来賓への歓迎行事など多岐に渡っている。一方、校外の演奏としては、地域の様々なイベント(各種式典から地蔵盆まで)や他校との交流演奏、コンサート出演、コンクール出場など枚挙にいとまがない。筆者の前任校(宇治市立南宇治中学校)での実践を回顧しても、年間の演奏会数は20回を下回ることがなかった。これだけ学校教育や地域社会で必要とされている実態を、社会が正しく認識し、学校教育での吹奏楽活動を理解しながら支援する基盤が求められよう。

 今、学校吹奏楽が直面している多くの問題のひとつに、吹奏楽を愛好する生徒数の減少がある。もちろん生徒の絶対数が激減している実状も大きな要因ではあろうが、年間を通して過度な期待に応えるための過密スケジュールに耐えられないという側面が指摘される。指導者側としても「本当に音楽を演奏し、表現して伝える喜びが教えられているのであろうか?」という危惧さえ持たざるを得ない現状である。本発表では、学校教育で吹奏楽活動がこのような発展を見せてきた要因は何かという問題を歴史的な背景の分析を通して明らかにし、音楽教育の目的を達成しながら今後の活動を一層進めるに当たっての方向性を導き出す。また、吹奏楽が真の意味で音楽教育となり得るための教育内容は何か、という点についてもふれてみたい。

参考文献 赤松 文治著『新版吹奏楽講座』(第7巻 吹奏楽の編成と歴史 ; 音楽之友社.1983)

私の口述発表資料「学校吹奏楽の発展に至る経過と課題-歴史的背景の分析から-」.pdf

世界吹奏楽史年表.pdf

我が国の学校吹奏楽史年表.pdf

仙台フィールドワーク

学会以外のフィールドワーク→ 文楽 ジャコモ・プッチーニ考

宮城教育大学でのガムラン(バリ)の授業発表


宮城教育大学でのぶちあわせ太鼓の授業発表

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