滑りながらも下り坂を進み、旧王宮前の広場を少し降りたところからはプラハの街並が美しく眺められた。赤い屋根が波のように続き、遠くには教会のドームや塔が天を向く。坂になっている広場にも砂蒔きを施した部分があり、それを辿って衛兵の立つ門まで登っていく。微動だにしない彼らは、この寒さの中どれ位の時間立っているのだろうか。若々しい顔だちの中に鋭い視線を感じた。しかし、観光客はお構い無しだ。衛兵の横に立って記念撮影をしているのだ。そんな時も彼らはスマイルのサービスをするわけではない。動けない仕事も楽ではなさそうだった。門を入ると壮麗なアーチをくぐり、眼前には聖ヴィート大聖堂が姿を現した。正面中央に大きな円形のステンドグラス、天を突き上げるように高い塔。威厳を感じずにはいられなかった。