2002年冬のウィーン・ザルツブルク・プラハ・ドレスデンの旅

誘発する第5のハプニング

ドレスデン中央駅に到着するや否や、ヒルトンホテルを探して路面電車に飛び乗る。アイ氏にとっても初めての訪問地であり、向かう方角を本能的に判断しての駆け込み乗車だった。何しろ2幕前の休憩を逸してしまうと有名な「エルザの大聖堂への入場」も見られず、3万円のチケットがどんどん蝕まれていくのだから。その慌てた行動が第5のハプニングを誘発するのであった。路面電車はどんどん郊外に進路を変え、高台の住宅地へと向かっていく。おまけに駅と駅の間隔は次第に長くなっていく。判断を躊躇っているうちに随分高いところまで登り、ドレスデン市街の夜景が夜空に瞬く光景が広がっていった。「これはいかん!」たまりかねて下車する。駅前の凍てついた路面で転びそうになった時よりも更に2度は低い気温である。急いで反対側の停留所に転ばないよう慎重な足取りで線路を渡る。待っている人々をかき分けて路線図に食い入る。「わぁ、こんな所まで来てしまった」気を取り直して待つこと5分。到着した電車に乗って市街地へ戻った。エルベ川を渡る寸前の駅で慌てて下車した。これ以上行けば、とんでもない場所にまた行ってしまう。道端で出会った人に道を聞きながら何とかヒルトンホテルに辿り着いた。午後7時前だ。この間の撮影は固く禁じられ自粛していたので画像はない。今だから後悔できるのだが「高台からの夜景くらい撮っておきたかった」と呑気なことを考える程である。

ザクセン州立ゼンパー歌劇場に到着したのは7時過ぎ、丁度1幕が終わったところであった。ゼンパー歌劇場といえばウェーバー・メンデルスゾーン・ワーグナー・R.シュトラウスなどの活躍の場となったが、特にワーグナーはタンホイザーをここで初演している。到着後に筆者はオーバーコートをクロークに預け(無料)場内を歩きながら撮影を続ける。女性の係員から「写真を撮るなら2ユーロでこのチケットを」と求められ、言うとおりに購入した。この話は以前に聞いていたので抵抗はなかった。かえって気が楽になったというものだ。ホールはウィーン国立歌劇場よりも豪華に見えたが、2点の気になることが目についた。一つは舞台の外幕が描かれたものである(本物の生地ではない)こと、あと一つは客席上部のシャンデリア回りが破損している点である。しかし美しく立派な歌劇場であることには疑う余地がない。

まず最上階からの眺め。

1階最後列の上手側から舞台を望む。

1階最後列の下手側から天井を見上げる。

板に描かれた外幕には何か訳がありそうだ。洪水の被害だろうか?

ザクセン王国アウグスト王がこの席から謁見したのだろう。

そろそろ第2幕が始まろうとしている。

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