西洋音楽の歴史49

-------------------
近代・現代の音楽
-------------------

 

■■シェーンベルクと12音音楽

 12音音楽と呼ばれるものは,オクターヴを構成する12の音のどれもが,すべて同一の資格を持つという前提に始まる。言い換えれば,機能和声による音楽における主音や属音といった機能をまったく持たせないことなのである。そして,そのl2の音すべてを1回ずつ使用する形で,セリーと呼ばれる音列を作り,このセリーをいろいろと操作して音楽を作っていくのである。したがって,あまり長大な曲にこの技法を用いるのはふさわしいことではなく,また音の積み重ねによって生じる機能和声的な性格を回避するためには,どうしても線的な対位法の手法を使わなければならなかった。このようなことから,l2音技法による曲は概して短いものが多く,中にはわずか数小節にすぎないという例もある。

 12音技法は,シェーンベルク(l874〜l95l)によって創始されたのであるが,彼が実際にその技法を使って完全な12音による作品を書いたのは,第一次大戦以後のことである。シェーンベルクの弟子であり,同時に後継者でもあったウェーベルン(l883一l945)やベルク(l885一l935)にも,この技法を用いた優れた作品が残されている。

 このl2音音楽というのは,いうまでもなく完全なる無調性の音楽である。無調性への探求は,ワーグナーやドビユッシーによって機能和声が解体の危機に瀕して以来,20世紀に人ってからいろいろな形で試みられた。複調あるいは多調的なアプローチや,微分音の使用によって調性を否定しようとする動きなど,l2音技法以外にもさまざまな試みがなされている。そのような中にあってl2音技法が特筆されるのは,この技法が厳格なセリーによる秩序ある無調であること,言い換えれば調性に変わる新たな音の秩序を作りだそうとしたものであるからだろう。

 

 戻る    次へ