西洋音楽の歴史47

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近代・現代の音楽
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■■印象主義の音楽

 印象主義という言葉は,当時のフランスの美術界において用いられていたものである。l874年のパリで,モネ,ルノアール,セザンヌ,ドガらによって開かれた展覧会において,モネの「印象・日の出」と題された絵が出品されたことに由来している。彼らの手法の中心となるものは,刻々と変化する光と影の効果を表現するためには,色をパレットの上で混ぜ合わせるのではなく,視覚作用を利用するという前提のもとにそのままカンバスに塗り付け,そこに現実そのままの明るさを再現するというものである。これを音楽に利用したのがドビユッシーで,そのためには全音音階とか隣接音を付加する和声構成,あるいは平行和音の使用などといった技法を用いて,従来の機能和声による音楽とはおよそ異なった響きの世界を創造したのである。

 ドビュッシーに少し遅れて現れたのがラヴェル(l875一l937)である。ドビュッシーから大きな影響を受けていた彼は,その作風に印象主義的な要素を多く持っていたが,創作の根幹をなすものはドビュッシーとはまったく異なっていた。ドビュッシーの場合は,響きの持つ色彩感がもっとも重要な要素となっており,そのために古典的な形式や旋律が解体されていく方向にあったが,ラヴェルの場合は,響きの色彩感への欲求は第一義的なものではなく,簡素で明瞭な形式が常に見られる。それが彼の音楽に漂う知的な香りを生み出しているのであろう。

 

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