西洋音楽の歴史46

-------------------
近代・現代の音楽
-------------------

 

■■20世紀音楽の出発点

 20世紀音楽の幕開けといわれるドビュッシー(l862一l9l8)の「牧神の午後への前奏曲」は.l894年l2月の初演である。この時期のヨーロッパでは,未だワグネリズムの余燼がくすぶり続け,その作風を受け継ぐ作曲家の数は決して少なくなかった。しかし,燗熟しきったロマン主義は,すべての技法を使いつくしてやや衰微のきざしを見せ始めていた。かといって,新たに起こってきた国民主義音楽には,まだ徹底した民族主義を見ることはできなかった。イタリアでは相も変わらずにヴェルディのオペラに陶酔し,次代の音楽への探求についてはいささか怠慢であったし,フランスにおける国民音楽の創造という動きも,結局は

ロマン主義の延長にすぎないものであった。古くはあるが秩序あるものと,新しくはあっても混乱のうちに存在しているものとが,相対しながらも並行しつつ,次代への突破口を捜し求めていたというのが,この時期における音楽界の実情であった。これを具体的に考察しよう。

 ドビユッシーがパリ音楽院に入学したのはl8フ3年で,ローマ大賞をとったのがそのll年後の84年である。このl884年という年はワーグナーの没した翌年に当たり,ブラームスはまだ5l歳で盛んに活動していたし,イタリアではヴェルディがやがて「オテロ」を発表しようという時期であった。ロシアでは,ムソルグスキーをはじめとする国民主義の作曲家たちや,あるいはチャイコフスキーがそれぞれ独自の道を歩み,オーストリアではウィンナ・ワルツがもてはやされ,フランスではダンディ,サン=サーンス,フォーレ,デユパルクなどのl9世紀的色彩の強い作曲家と,デュカース(l865一l935)やルーセル(l869一l93フ)のような20世紀的作曲家とが混在していた時代である。

 

 戻る    次へ