西洋音楽の歴史45

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国民楽派の音楽
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■■国民主義音楽の理解

 音楽史における国民主義は,時代的にはl9世紀後半から20世紀前半にまで及ぶが,すでに考察してきたように,内容的に見れば極めて多種多様な性格を持つ音楽が混在している。この時期に,特に民族性を強く表現した音楽を狭義の国民主義音楽とするが,広義にはフランクやサン=サーンスによる国民音楽の創造という姿勢も含めて考えることができるし,アメリカにおける独自の音楽の創世期の活動も包含することができるだろう。しかし一般に国民主義の音楽といわれるものは,それまで音楽国ではなかった国々において,言い換えれば遠い中世以来の音楽の伝統を持たない国々において発生した,民族色の濃い音楽に限定されて語られることが多い。したがってロシアやボヘミア,スカンジナビア諸国に,その範囲を限定することもないではない。いずれの立場をとるにせよ,これらの音楽が結果的には20世紀の音楽への一つの導火線的な役割を呆たしたことは事実である。

 

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