西洋音楽の歴史44

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国民楽派の音楽
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■■スカンジナビア諸国

 スカンジナビア諸国のうち,デンマークに出たガーデ(l8l7一l890)は,国民主義的な傾向は示さず,あくまでもドイツ・ロマン主義的な作品を書いた。それに対して,ノルウェーのグリーグ(l843一l907)やフィンランドのシベリウス(l865一l957)には,国民主義的傾向が強く見られる。グリーグはライプチヒ音楽学校に学び,ドイツ・ロマン主義の影響を受け,技法的にはその枠内にあったが,民族色も強く打ち出して,北欧的な美しさにあふれた作品を書いている。劇音楽の「ペール・ギュント」をはじめ,l0巻からなるピアノのための「叙情小曲集」やイ短調のピアノ協奏曲などに,そのすばらしい例を見ることができる。

 シベリウスには代表的な名作「フィンランディア」があるが,交響曲をはじめとした多くの作品において,手堅い構成の輪郭の中に美しい叙情性をたたえ,簡明ながら内的な緊張感にあふれる風を見せている。年代的には20世紀半ばにまで及ぶ作曲家であるが,国民主義的な姿勢を生涯を通じてくずすようなことはなかった。そういう意味ではl9世紀的な作曲家だったと言ってよいだろう。

 

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