西洋音楽の歴史43

-------------------
国民楽派の音楽
-------------------

 

■■ボヘミアの国民音楽

 ボヘミアというのは現在のチェコである。長い間オーストリアとハンガリーの属国としての地位に甘んじていたが,l9世紀の後半に入ると民族的意識が著しく高まり,しだいに独立への気運が盛り上がるようになった。最終的に実現したのは20世紀に入ってからの第n次大戦後のことであるが,この国の国民主義音楽を考えるには,そのような社会事情を十分理解する必要がある。ボヘミアの音楽の歴史はスメタナ(l824一l884)に始まり,ドボルザーク(l84l一l904)を経て20世紀の作曲家へと受け継がれ,その伝統が形成されていくが,スメタナやドボルザークの時代には前述の社会情勢を反映して,例えばスメタナの「我が祖国」のような国土への愛着を表した音楽や,「売られた花嫁」のような民族色豊かな作品が現れるようになった。ドボルザークのピアノ連弾曲「スラブ舞曲」なども,そのような傾向を反映した作品である。

 戻る    次へ