西洋音楽の歴史37

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後期ロマン派の音楽
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■■19世紀後半のフランス音楽

 19世紀前半のフランスはオペラの全盛時代で,ベルリオーズの書いた純器楽作品にはあまり関心が奇せられなかった。そしてこの傾向は,世紀の後半に入ってもほとんど変わらなかった。つまりビゼーをはじめ,マスネ(l842一19l2),グノーらの叙情歌劇がもてはやされていたわけである。しかし一方では,何とかそうした傾向を打破して,新しいフランス音楽を創造していこうとすZ動きもあった。フランク(1822一l890)やサン=サーンス(l835一l921)を中心とした国民音楽協会の設立も,その一つの表れであった。しかしぞの点では一致して協力的に活動したこの二人の作曲家も,作風においてはまったく異なった方向を示していた。

 フランクはベルギー生まれで,パリ音楽院に学んだあと,生涯のほとんどを教会オルガニストとして過ごし,生前はあまり音楽界の表面に出るようなことはなかった。排他的な音楽界に受け入ねられなかったことにもよるが,やはり彼の地味な人柄がそうさせたのだろう。二短調の交響曲やイ長調のヴァイオリンソナタに代表されるような絶対音楽的な作品を書いている。そうした点ではややブラームスに似ていないでもない。それに対してサン=サーンスのほうは,ピアニストとしての縦横無尽な活動を軸にして,多彩で華麗な音楽活動を繰り広げた。

 この二人の関係は,ドイツにおけるワーグナー派とブラームス派の関係と同じように,それぞれの系列下に次代の作曲家群を従えているのである。すなわちフランクには,ダンディ(l85l一l93l),ショーソン(l855一l899),デユパルク(l848一l933)などが続き,サン=サーンスにはシヤブリエ(l84l一l894)やフォーレ(l845一l924)などが続く。フォーレの音楽には,極めて洗練されたフランス趣味がよく表わされている。

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