西洋音楽の歴史30

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前期ロマン派の音楽
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■■ショパンとピアノ音楽

 ピアノの詩人と評されるショパン(l8l0一1849)は,いうまでもなくロマン派のピアノ曲において,シューマンと並ぶもっとも重要な作曲家である。ショパンの業績を一言でいえば,ピアノにおける表現の可能性をまったく新しい面から間いたことであろう。また彼の音楽性は,まさにそのためにうってつけのものだったと言える。装飾音型の多様,自在なテンポ・ルバート,あくまでも快い和音,そして流れるような甘美な旋律といった彼の音楽語法は,ピアノという媒体を離れては,もはや語法としての意味をなさないほどである。シューマンとはまた違った意味で,ピアノを歌わせることが彼の音楽最大の特徴なのである。また,マズルカ,ポロネーズ,バラードといった民族的な音楽を芸術的なものに高め,素朴な存在であったワルツを洩奏会用の優雅な音楽に衣がえしたことも,彼の功績の一つとして忘れることはできない。

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