西洋音楽の歴史29

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前期ロマン派の音楽
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■■シユーマンの音楽

 シユーマン(l8l0一1856)は,音楽史的な立場からとらえると,ピアノ曲と歌曲に大きな足跡を残した作曲家である。彼はl830年に作品1のピアノ曲「アベック変奏曲」を完成して以来,ほばl0年にわたって主要なピアノ曲を書き続けた。l840年は「歌の年」といわれ,名曲として知られる歌曲の大半が作曲された。その後は交響曲や室内楽なども手がけ,晩年には再びピアノ曲と歌曲を少しばかり書いている。

 歌曲においては,シューベルトの確立したドイツリートの道を引き継いだ。シューマン特有の抒情性に加えて,ピアノ伴奏に歌と同等もしくはそれ以上の役割を与えることによって,独自のロマンティシズムを表している。またピアノ作品においては,ショパンと並ぶロマン派の重要な作曲家と見なされている。性格的小品(キャラクターピース)を組曲風にまとめた作品が多く,歌う内声部の導き方に独特の書法を示し,ロマン主義的幻想性を豊かに表現している。極端なまでに個人的感情の表出を重視するシューマンにとって,歌とピアノはもっともふさわしい表現媒体だったに違いない。

 またシューマンは,文学にも深い造詣を持っていた。自ら評論の筆をとって「音楽新時報」を興し,近代音楽批評の基盤を作ったことも,彼の重要な功績の一つである。

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