西洋音楽の歴史28

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前期ロマン派の音楽
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■■ベルリオーズと標題音楽

 標題の付けられた音楽は,ヴィヴァルディの「四季」をはじめとして数多くの先例があるわけだが,主として描写的な性格のものが多かった。作曲家の内的感情の表出に主眼をおく傾向は,ベートーヴェンの「田園」によって顕著になる。この種の主観的な標題音楽は,ロマン主義的風潮が強まるにつれて総合性が追究されるようになり,美術的・文学的・劇的な表現がより推し進められるようになった。ベルリオーズ(l803一l869)の「幻想交響曲」は,ロマン主義の標題音楽を確立した作品と言える。このようなロマン主義の標題音楽においては,作曲家としてその曲を作るに至った契機(文学作品や風景など)の存在を明らかにすることと,それを聴衆に理解させるための標題と一定の動機の設定などが,欠くことのできない要素となった。ベルリオーズは標題の内容をより強く聴衆に伝えるために,特定の事象に一つの決められた楽想を与え,これを固定楽想と呼んだ。この方法は,リストの主題の変容やワーグナーのライト・モティーフ(示導動機)に見られるように,ロマン派の多くの作曲家によって用いられている。

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