西洋音楽の歴史25

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前期ロマン派の音楽
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■■シユーベルトとリート

 リートという言葉はドイッの芸術歌曲全般を指し,広義には古い時代の合唱曲をも含んでいる。しかしここでいうリートは,ドイツのある時期に成立した独特の芸術分野のことである。そしてこのリートの歴史は,まぎれもなくシユーベルト(l797一l828)によって始まった。

 シユーベルトによって確立されたリートは,詩でも音楽本位でもなく,詩と音楽とが真に一体となった芸術である。モーツァルトやベートーンの歌曲ももちろんリートなのであるが,「リートはシューベルトに始まる」といわれるのは,このリートの本質がどれだけ実現されている問題にしているからなのである。シユーペルトは生涯に600曲にもなるリートを書き,少なくともその3分の1は世界にどこかで常に歌われているほど親しまれている。「野ばら」「魔王」のようなリートがこよなく愛唱されているのは,その大衆性ばかりではなく,真の意味におけるリートとしての高い芸術性を持っているがためである。

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