西洋音楽の歴史23

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前期ロマン派の音楽
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■■古典主義とロマン主義の音楽

 主題の設定とその操作という技法のうちに,対照性の原理というものを追究した古典主義の音楽に比較すると,ロマン主義の音楽は,主題操作という点ではるかに自由であった。主題なり楽想といったものは,ロマン主義の作曲家にとっては自己の心情的体験を表現するための媒体であって,それによる操作とか展開とかいうものは,それほど必要なものではなかった。彼らは形式美の迫究ということよりも,主題・楽想を通した心情の直接的な表現を求めたのである。このようなところに,小品器楽曲の生まれてきた必然性を認めることもできる。自己表出ということに重点をおいたロマン主義の作曲家たちは,形式美の追究の代わりに,旋律語法・和声・リズム・音色といったあらゆる音楽的要素を利用し,従来とはまったく異なった音楽的表現を行ったのである。ここにロマン主義音楽の本質的な特徴をとらえることができるだろう。

 このようにロマン主義の作曲家にとっては,創作活動の出発点において,音楽以前に心を動かすなんらかの誘因を必要としていたのである。そこに文学と結びついていく要因もあって,標題音楽の発生を促すことにもなったのである。要するにロマン主義音楽というものは,何よりも自己表出という主観性を求めた音楽なのである。

 

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