西洋音楽の歴史21

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古典派の音楽
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■■ハイドンとモーツァルト

 古典主義的なソナタ形式はハイドンによって確立され,それに基づく組形式としてのソナタ,そのソナタを応用しての交響曲や弦楽四重奏曲なども,またハイドンによって確立された。これらはモーツァルトやベートーヴェン(l770一l827)によって内容的にさらに充実したものとなった。加えてそれに人間性が加味され,精神的な深みが与えられるようになるのは,少なくともベートーヴェンの中期以降の活動まで待たねばずならない。ハイドンはオーストリアの片田舎に車大工の子として生まれ,シュテファン教会の合唱隊員として音楽家のスタートを切った。後にエステルハージ家の宮廷楽長となり,そこで30年近い年月を過ごすうちに,今日残されている多くの作品を書いた。それに対してモーツァルトは,音楽家としても才能豊かな父に育てられ,神童といわれて華麗なる宮廷めぐりのうちに過ごした幼少時代を経て,イタリアやフランスへの旅に青年前期のすベてを費やし,貧困のうちに残りの半生を送った。ハイドンの音楽が素朴で荒削りな印象を与えるのに対して,モーツァルトの音楽が繊細かつ優雅で都会的な印象を与えるのも,おそらくは彼らの出身・環境・音楽を修業した過程に違いがあるからであろう。モーツァルトの35年という短い生涯は,ハイドンの24歳から59歳までの35年間に当たる。ハイドンはモーツァルトの師的な存在であると同時にモーツァルトの影響を受けた後輩的な存在といった面も見せている。この二人の音楽家は性格においてはまったく異なっているが,音楽史的には切り離して考えることはできない。

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