西洋音楽の歴史2

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古代からルネサンス音楽
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■■古代世界と音楽

 エジプト人がナイル川を中心として文明を築き上げたように,シユメール人もチグリス・ユーフラテス両流域にその文明を開花させていた。この時代を含めての古代世界における音楽は,常に生活と密着して存在していた。それは,狩猟・農耕・冠婚葬祭・個人ないしは部落間における人間的交際(感情的伝達が中心という実生活面に役立てられた場合と,軍事的・国家的・宗教的といったいわゆる儀式性の音楽の場合との二つに分けてその機能性をとらえることができる。ヴァルター・ビオラ(ドイツ・ヨーロッパの音楽研究家)は,著書「世界音楽史」の中で,「初期の音楽は,明確な理論や記譜法に基づいたものではなかったけれども,秩序や演奏上の法則は持っていた。祭式の歌にはその社会の幸福がかかっているものと考えられていたので,その演奏には厳しい厳正さが求められていた。」と古代の音楽の祭式性について述べており,さらに「音楽作品,すなわち今日我々が言う意味での作曲というものは存在せず,ただ型あるいは原型と,それに従って歌う幾つかの方法とがあっただけであった。」とその存在について説明している。

 音楽の発生時における形態がどれほど原始的であっても,人間の生活にとって必要であればこそ音楽が生まれてきたに違いない。おそらくは,人声による音楽が楽器によるそれよりも先行したと推測できるが,ガラガラのようなものは,旧石器時代すでに存在していたことがわかっている。そしてそれに続く時代に,今日で言う管・弦・打楽器のごく初期の形のものも作られてきたのである。しかしその存在や具体的な形については,残されている資料によって確認されているものの,その楽器類の楽器としての機能そのものについては再現することはできない。

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