西洋音楽の歴史16

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バロック音楽
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■■バッハとヘンデル

 音楽史上に燦然と輝くこの二人の作曲家は,奇しくも同年の生まれである。バッハ(l685一l750)は生地のアイゼナハからあまり遠くへ離れることなく,その一生を宮廷もしくは教会つきの音楽家として全うしたのに対して,ヘンデル(l685一l759)のほうは,ドイツからイタリアへ行き,さらにはイギリスへと渡り,主として歌劇創作の忙しさのうちにその生涯を閉じている。前者が宮廷や教会に属する形での中世ないしはバロック的な古い音楽家としての生き方の中で活動したのに対して,後者は劇場音楽という一般庶民との直接的な交渉のある世界で,やや近世的な職業音楽家として活躍をした。両者とも,その作品においてはポリフォニックな技法を中心としているが,どちらかといえばヘンデルのほうによりホモフォニックな響きを感じるのは,あるいは両者の活動した場所の違いというものから来ているのかもしれない。バッハの作品の中で「マタイ」と「ヨハネ」の二つの受難曲,クリスマス・オラトリオ,ロ短調ミサ,多くの教会カンタータなどの宗教音楽に加えて,ブランデンブルク協奏曲や平均律クラヴィア曲集などの器楽曲は,現在でも頻繁に演奏されている。一方ヘンデルの作品のうち「メサイア」や「水上の音楽」,合奏協奏曲などはしばしぱ演奏されているが,彼が生涯を通して残した多くのオペラのほとんどはあまり上演されていない。

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