西洋音楽の歴史15

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バロック音楽
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■■バロック時代の器楽

 オルガンの歴史は古く,古代の水圧式に始まるが,l5世紀末にはほぽ現在と同じようなオルガンになっていた。しかし主として教会の内部で使用され,飽くまでも部分的な役割しか果たしていなかった。l4世紀ごろからはしだいに純器楽という立場をとるようにもなったが,当時はまだ楽曲の数も少なく,声楽曲をそのまま利用することが多かった。バロック時代に入って,オルガン音楽はその黄金期を迎える。主にドイツを中心に栄え,イタリアのフレスコバルディ(l583一l643)の流れを受け継いだフローベルガー(l6l6一l667)に始まる南ドイツの楽派と,オランダのスウェーリンク(l562一l62l)によって開かれた北ドイツの伝統が一体となって,優れたオルガン音楽が生み出された。そしてその伝統の上にバッハやヘンデルが現れたわけである。

 クラビコードやハープシコードはルネサンス時代から広く普及していたが,楽曲的にはオルガンと同じ事情にあった。しかしバロック時代に入るとその全盛期を迎え,イタリアではフレスコバルディに始まる伝統がD.スカルラッティ(l685〜l757)において実を結んだ。フランスではシャンボニエール(l60lからl0一l672)に始まり,クープラン(l668〜l733)においてその隆盛期を迎えた。ドイツではJ.C.F.フィッシャー(l665?一l746)やクーナウ(l660一l722)などによってその活動が推進されていった。

 弦楽器では,ルネサンス時代に多用されていたリュートはすでに全盛期を過ぎ,従来からのヴィオール族に新たに加わったヴァイオリンが中心的な楽器として,特にイタリアにおいて発達した。ストラディバリをはじめとするヴァイオリン製作の名工が次々に出現したのも,ヴァイオリン音楽がイタリアにおいて特に盛んになった一因であった。この分野では,ビタリ(l632一l692),トレッリ(l658一l709),コレッリ(l653一l7l3)などが出て,演奏法や器楽様式を確立した。彼らに続いてヴィヴァルディ(l678一l74l)やタルティーニ(l692〜l770)などが出るに及んで,その全盛期を迎えるに至った。

 このように,この時期の器楽では,新しい器楽形式の発生とそれに伴っての様式の発達,各楽器に固有な演奏法の確立と演奏技巧の進歩,合奏音楽の促進など,特徴ある活動が見られた。作曲技法からいえば,いまだポリフォニーが優先していたが,通奏低音によるホモフォニーへの指向も忘れてはならないだろう。

 

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