西洋音楽の歴史14

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バロック音楽
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■■劇音楽の発生とその興隆

 l6世紀の末ごろのフィレンツェで,カメラータと呼ばれる一群の文化人たちによるグループが,複雑に発展しすぎたポリフォニー様式への反発から,その理想をギリシャ悲劇に求めて,劇的表現に富んだ劇音楽を創始した。詩をレチタティーヴォ風に歌い,歌と話言葉の中間をいくその旋律を,楽器による和声的な伴奏が支えた。この形の歌曲をモノディと呼び,それがつなげられて一つの劇が構成された。これを当時は「音楽つきの劇」と言っていたが,これが後のオペラやオラトリオへと発達していくのである。カメラータによる主要な作品のうち現存するものには,カッチーニ(l545?一l6l8)の独唱アリアとマドリガル集「新音楽」と,ペーリ(lj6l一l633)の牧歌オペラ「エウリディーチェ」がある。フィレンツェに起こったこの新様式の劇音楽は,たちまちの内にイタリア全土に広まっていった。まずベネチア楽派のモンテヴェルディ(l567一l643)の手によって,名実ともにオペラ的なものへと成長した。次いでlフ世紀後半からl8世紀の初めにかけては,ナポリへも波及して盛んになり,A.スカルラッティ(l660一l725)を中心とするナポリ楽派の活動とあいまって,より近代的なオペラへと発達していった。

 

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