このページは吹奏楽や管弦楽、合唱ならではの、豊かで温かく澄み切ったハーモニー造りの一助となればと思い、ご提供いたします。
1.純正律とは
純正律(自然倍音列上の音程を使用した音律)というのは簡単にいえば平均律に調律されたピアノでは出すことのできない完全に澄み切ったハーモニーを造るための微妙な調整を施した音律です。全ての調で純正音程を作ることは管弦楽器や合唱にしかできないのですが、この音律も体験していない人には何が何だか分からないことでしょう。
まず巷の鍵盤楽器は一定の音律(個々の音の高さを数理的に明らかに規定するもの)に平均律を採用しています。1オクターブ12半音の幅を一定に揃えそれぞれの音程を均等に割り振った音律を平均律といいます。
紀元前6世紀頃にさかのぼりピタゴラスの音階(5度循環の音律)に始まって16世紀には中全音律(長3度を純正律に近づけるため5度を少し狭くとった音律)が使われはじめました。19世紀頃には平均律が一般的になり、現在に至っています。
完璧に見えるこの平均律にもやはり弱点があります。長3和音や短3和音が自然倍音で割り切れないため完全に溶け合ったハーモニーにはならないという点です。そこで自由に微妙な音程の変えられる管楽器や弦楽器の合奏は、この純正律を基準にして他の楽器との和声を構築していくのです。
→参考: New! 音律についてもっと詳しく
2.微細な音程の単位について
平均律の1オクターブを12に割った半音を、さらに100等分した微細な音程の単位をセントと言います。従って50セントが2分の1半音ということになります。
3.実際に試してみましょう
我々は幼い頃から平均律に慣れ親しんで来ましたのでそれが当たり前という方もいらっしゃるでしょう。良く分からないという方は下の表(純正律習得のためのバッハコラール集より転載)を参考にして一度3名で三和音を鳴らしてみてください。詳しい表の見方は出版譜をご覧ください。また、ハーモニーディレクターなどの音程を調節できるキーボードがあれば実際聴き比べてください。エレクトーンなどの長三和音はかすかに三度が唸っているのが分かると思います。
それでは旋律に三度の音程が出てきたときはどうするのか、ということが疑問として残るのではないでしょうか。旋律は基本的に慣れている平均律で演奏していることが多いと思います。しかし和声に溶け込むようなコラールのソプラノ声部などは、ゆっくりとしたパッセージですから純正律を考慮して演奏することが可能です。しかし速く技巧的な部分では純正律などと言ってられませんから、自ずと平均律になってきても止むを得ません。
また和声の進行上、導音を高めに取った方が美しく聞こえる場合もありますので、ケースバイケースと言ったところでしょう。
私はトロンボーン専攻であったこともあり、生徒の前では目で見て分かるスライドを見せながら説明しています。バッチリはまった時は唸りが消えて美しくブレンドされたハーモニーが生まれます。いちいち「この音は低めに」なんて書き込ませるよりは時々ハーモニー練習をして、耳を肥やしたほうが指導者側も楽なのではないかと思う今日この頃です。
4.練習曲(バッハのコラール集)を使ってのトレーニングについて
私はバッハのコラールの中からいくつかをトレーニング曲として使っています。バッハの和声は「これ以上はない」ほどの機能的な造りの中に格調高い天の声とでも言いましょうか独自の世界があります。またそれぞれの声部持スリムな4声体の中で良く整えられた動きで演奏者をも楽しませてくれます。元々が4声体ですので小編成でも十分楽みながら学べると思います。
詳しくは出版譜の方をご参照ください。
単位: セント |
ハ調 | 変ニ調 | ニ調 | 変ホ調 | ホ調 | ヘ調 | 嬰ヘ調 | ト調 | 変イ調 | イ調 | 変ロ調 | ロ調 |
C | 0 | -11.7 | +17.9 | -15.6 | +13.7 | +2.0 | -9.8 | -2.0 | -13.7 | +15.6 | +3.9 | +11.7 |
Des | +11.7 | 0 | -11.7 | +17.9 | -15.6 | +13.7 | +2.0 | -9.8 | -2.0 | -13.7 | +15.6 | +3.9 |
D | +3.9 | +11.7 | 0 | -11.7 | +17.9 | -15.6 | +13.7 | +2.0 | -9.8 | -2.0 | -13.7 | +15.6 |
Es | +15.6 | +3.9 | +11.7 | 0 | -11.7 | +17.9 | -15.6 | +13.7 | +2.0 | -9.8 | -2.0 | -13.7 |
E | -13.7 | +15.6 | +3.9 | +11.7 | 0 | -11.7 | +17.9 | -15.6 | +13.7 | +2.0 | -9.8 | -2.0 |
F | -2.0 | -13.7 | +15.6 | +3.9 | +11.7 | 0 | -11.7 | +17.9 | -15.6 | +13.7 | +2.0 | -9.8 |
Fis | -9.8 | -2.0 | -13.7 | +15.6 | +3.9 | +11.7 | 0 | -11.7 | +17.9 | -15.6 | +13.7 | +2.0 |
G | +2.0 | -9.8 | -2.0 | -13.7 | +15.6 | +3.9 | +11.7 | 0 | -11.7 | +17.9 | -15.6 | +13.7 |
As | +13.7 | 2.0 | -9.8 | -2.0 | -13.7 | +15.6 | +3.9 | +11.7 | 0 | -11.7 | +17.9 | -15.6 |
A | -15.6 | +13.7 | 2.0 | -9.8 | -2.0 | -13.7 | +15.6 | +3.9 | +11.7 | 0 | -11.7 | +17.9 |
B | +17.9 | -15.6 | +13.7 | 2.0 | -9.8 | -2.0 | -13.7 | +15.6 | +3.9 | +11.7 | 0 | -11.7 |
H | -11.7 | +17.9 | -15.6 | +13.7 | 2.0 | -9.8 | -2.0 | -13.7 | +15.6 | +3.9 | +11.7 | 0 |