フィルイン

■ 実際の音(MIDI)を聴いてみることができます。

[はじめに]

 「フィルインと譜面に書かれてあるんです、どうしましょう?」と困った顔で私のところに来る生徒が時折います。「自由にやっていいよ」と答えると益々困り果てる場合もしばしばです。フィルイン(フィル)とは曲の間や変わり目など(4小節・8小節おき)に通常のリズムとは異なるアクセントをに入れる短いフレーズ(1小節程度)のことです。曲を盛り上げる役割などにも使います。フィルインの話をする前に触れなければならない基本的な奏法について先に書きます。

[シングルストローク・ダブルストローク]

「ひとつ打ち」と呼ばれるのがシングルストローク、「二つ打ち」がダブルストロークです。

シングルストローク

 1回の振り下ろしで1回のショットを打つ基本的な奏法です。(RLRLRLRLRLRL...)

ダブルストローク

 1回の振り下ろし動作で2回のショットを打つも奏法です。ダブルストロークロールの手順は、RRLLRRLLRRLL...となります。通常は「ロール」といえばダブルストロークロールのことを言います。このダブルストロークは初心者の生徒にとって大きな課題ですが、どうしても乗り越えなければなりません。

ダブルストロークの奏法

 1打目はリスト(手首)ショット、2打目はフィンガー(指)ショット練習することもありますが、1打目も2打目も腕全体のバランスを考え絶妙なで滑らかに打ちます。何はともあれ2打目が弱くなりがちですから、同じ粒を揃えて打つ事を重点に身に付けたいものです。

オープンロールとクローズドロール

 マーチングなどでは粒立ちを重視するためロールにはダブルストローク「二つ打ち」だけが用いられ、オープンロールと呼びます。クラシック作品の演奏でスネアの「ザーーッ」という粒の細かなロール奏法をクローズドロールと呼んでいます。クローズドロールはショット直後にスティック先端をヘッドに押しつけるようにし、ヘッドの上を転がすようにリバウンドさせて演奏します。切れ目なく続いた感じを出すために左右のショットを重ねて演奏し、継ぎ目をなくすようにします。

[パラディドル]

 パラディドルとは、シングルストロークとダブルストロークの交互に組み合わされたフレーズのことで、音色や表情の変化を狙った奏法です。ダブルストロークの位置によってノーマル(シングル)、インワード、リバース、ディレイドの呼び名があります。左右を2種類の太鼓へ振り分けるだけでも魅力的なフレーズが得られます。譜例の右には、それぞれのパラディドルを使ったパターン(S.D.+H.Tom+M.Tom+L.Tom)を示します。ダブルストロークロール時に逆の手が移動することと、クロスを避けることが配慮事項です。

シングルパラディドル(Single Paradiddle)

インワードパラディドル(Inward Paradiddle)

リバースパラディドル(Reverse Paradiddle)

ディレイドパラディドル(Delayed Paradiddle)

 6/8拍子で「RLRRLRLLRLRR|LRLLRLRRLRLL」(Para-triplets)のように使うと楽しいフィルになります。 

ダブルパラディドル(Double Paradiddl)

逆ダブルパラディドル(LRLRLLRLRLRR)

 3連符に当てはめるためのパラディドルです。実際の演奏でも活用でき、ドラムセットでの応用の際にはルーディメントとして大変重要です。


[フィルイン]

 ドラムセットの譜面は特に書式が決められているわけではありません。最初にお断りしておきますが、私がドラムセットを五線紙上に記譜する際に下にある譜例ように楽器を配置しています。できる限り五線に収まりが良いようにするためです。また、これらの譜例はスネアドラムで正確なリズムや強弱など、基本的な奏法を十分収得した上で一つの参考例としてお考えください。頻繁に多用することは禁物です。下の譜例はスロー8ビートですが、使っているフィルは全部で5箇所になります。演奏可能な手順(クロスしないよう配慮する)でダブルストロークを用いています。

5-6小節目 9-10小節目 14小節目 17-18小節目 24小節目


2小節目 4小節目


3小節目


4小節目


[シャッフル系] 4小節目 8小節目

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