2003夏・罪滅ぼしの旅

― 運転手+添乗員+カメラマン ―

阿寒への恐怖体験

昼頃には層雲峡に下りてきた。ロープウェイの篭から出る際、目に入ったのが新しい落石であった。大きな岩が砕け、川岸の柵や駐車してある自動車がメチャメチャに壊れている。8/10の早朝5時半頃、雨で地盤が緩んだ斜面をごろごろと落石したらしい。この台風10号の影響で日高・十勝地方など、北海道にもかなりの被害が出たが、この落石も台風の影響だ。大自然の力の前に成す術なしという様だった。気を取り直して昼食に麓のラーメン屋でバターコーンラーメンを注文する。これから最終宿泊地の阿寒湖畔に向かうのである。ここで予想もしない恐怖の体験をすることになった。

陸別から上足寄に向かう道道からショートカットのため雄阿寒に抜ける林道を選んだ。ダート(未舗装道路)であることに躊躇いはなかったが、地図にある林道を走っていくと車載のナビゲーションでは道が途絶えている。何本もの支線に分かれて伸びる林道は地図にない。ナビゲーションの現在位置が大きな道路に近付くので勢い良く走っていく。道は大きな砂利が敷かれた路面になり、敢え無く行き止まり。仕方なくUターンを試みるがタイヤが取られて身動きできなくなる。時刻は16時30分を回って辺りは暗くなってきた。このまま携帯電話も圏外で人の気配が全く無い山奥で熊の出没に怯えながら一夜を過ごし、手持ちの菓子類で空腹を凌いだとしても、翌朝林道を下り民家のある上足寄までは徒歩で半日を要する距離である。そこから電話でJAFを手配し、車を引っ張ってもらうまでに夕方になろう。

そんなことを同乗者に説明して下車を命じる。全員で押しながら一度目の脱出は失敗。二度目は小枝を前輪(FFである)の前に押し込みトライ、これまた失敗。全員泥だらけになって砂利を素手で掘るもシャーシは砂利に接してつかえている。どこかで動物に見られているような錯覚を振り払って押すも三度目の失敗。今度失敗すれば車輪は深く落ち込む。最後のチャンスと心に誓いながら四度目に満身の力を振り絞って押す、奇跡的に脱出できた。喉はカラカラ、体中の力は抜け、目は点になった。何とか動きだしたレンタカーも泥まみれ、構うことはない、上足寄の里まで20分の道を猛スピードで下りたのだった。

もしも脱出を断念していれば明日は満席の飛行機にも間に合わず帰ることは困難になっていただろう。泥々の車で泥々の靴と服装の一行は阿寒湖畔の宿に命からがら到着することが出来た。食事にありつき布団で寝られる。こんな幸せが他にあるだろうか。最終日、5日目の朝になってもまだ昨日の興奮は醒めない。あの悪夢を思い出しながらようやく苦笑できたのは阿寒の豊かな森を早朝散歩した頃であった。あぁ、今私は生きているんだ。


新しい落石で柵も車もメチャメチャ
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一度は食べたかったバターコーンラーメン
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層雲峡との別れ際「大函(おおばこ)」


林道の恐怖体験
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命からがら脱出成功


阿寒湖に隣接するオンネトー
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エコミュージアムセンターから湖畔に出る


ボッケ(アイヌの言葉で「沸き立つ」の意)
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豊かな阿寒の森で出会った切り株のキノコ


ご存じの毬藻

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