西洋音楽の歴史54

-------------------
近代・現代の音楽
-------------------

 

■■前衛的な音楽

 20世紀に入ると,いろいろな意味において,音楽というものの概念を変えていこうとする動きがあった。ドビュッシーによる印象主義の音楽,ストラヴィンスキーに見られる原始主義的なリズム,あるいはバルトークの民族主義的な音楽といったものも,広義にはその一つの表れと言っていいだろう。しかし彼らの音楽も,楽器を用いるとか演奏家を必要とするとかいった点では,過去の音楽の在り方とは変わっていないと言える。ここで説明しようとするものは,こうした音楽の在り方そのものの概念をまったく変えてしまうような作品についてである。

 フランスのシエフエール(l9l0一)によるミュージック・コンクレート(具体音楽)は,テープに収録した各種の音に逆転・変調などの処理を与え,それを編集して作品に仕上げるというものである。ドイツのシュトックハウゼン(l928)による電子音楽は,発振器による音を素材とし,それに電気的な処理を加えて作品に仕上げるものである。前者は自然界に存在する具体音を音素材に用い,後者Iょ機械による発振音を用いるところに違いはあるものの,いずれも作品は録音テープ上に固定され,演奏という行為を必要としないという点では同じである。そしてこれは,作曲・演奏・聴取という行為によって成り立っていた伝統的な音楽の在り方を根底から変えるものである。しかし,これらの音楽が単なる実験的な試みとして終わるのか,あるいは歴史的に大きな意味を持つに至るかは,我々の次の世代の判断を待たねばならないだろう。

 

 戻る    次へ