木管楽器

ピッコロ 

 ピッコロはフルートの半分の管長で、1オクターブ上の音域をカバーします。管楽器の中では最高音を担当し、フルート奏者が持ち替えて演奏します。ベートーベンが交響曲第5番、第6番ではじめてオーケストラの中に加えました。

 ネジによるタンポ調整ができないだけに、デリケートな楽器への心づかいを忘れないようにしたいものです。置き忘れの心配も必要な楽器ではないでしょうか。


フルート

 フルートの歴史は古く旧約聖書や古代エジプトの昔にさかのぼります。木製フルートや象牙製のフルートに替わって現在の金属製になったのは、1847年でベームが考案した型をもとに音色を良くするためにホールを広げたりフィンガリングのためにアクション改良が施されたものです。木管楽器の中でもリコーダーと同じくリードを持たない楽器です。

 タンポの調整やヘッドコルクの気密性など気を遣わなければならない点も多いのですが、吹奏楽の中では高音の担い手として、細かいパッセージも容易にこなせる楽器です。柔らかで表情豊かなリングキーとミスの少ないカバードキーがありますが、初心者にはカバードキーをお勧めします。


オーボエ

 近代のオーボエは16から20個のトーンホールを持っていますが、奏者が直接押さえるのは6個だけです。ファゴットと同じくダブルリード(木製の薄く削った板を2枚合わせて響かせる)で発音しますが、音響的に木管楽器のなかでも一番複雑な構造を持っています。円錐形の管体からはシャープで切れの良い音色が出せます。どんなに弱音を出してもしっかりと通ってくるその音色は独特で、ソロを担当する楽器として十分なキャラクターの持ち主です。

 低音域の弱音が大の苦手で音域もさほど広くない上に、良きにつけ悪しきにつけリードの状態を最良に保つことが難しい楽器なので、奏者の熟練と周囲の配慮が必要でしょう。また、木管楽器全体に言えることですが温度や湿度に敏感で直射日光には当ててはなりません。管体がひび割れをお越し、樹脂を流し込む大掛かりな修理の必要が生じます。

 


コーラングレ

 別名イングリッシュホルンは17世紀末に登場した楽器で、音律はオーボエより5度低く深く豊かな音色が特長です。ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界」の第2楽章や、ロドリーゴのアランフェス交響曲第2楽章など長くゆったりとした哀愁を帯びたソロを受け持ちます。フランス近代の作曲家の作品にも多く使われています。

 ピッチが取りにくく、指も届きにくいうえ、リードは手に入りにくいので注意が必要です。お金のかかる楽器です。


ファゴット

 別名バスーンとも呼ばれ、低音を担当するダブルリードの楽器で、2本の管が底で連結されているのが特徴です。ドルシアンと呼ばれた楽器が原型で、1843年にドイツのヘッケルが創った形が今日では最も一般的です。おどけた感じの音色は低音になるにつれて力強さを増します。

 オーボエほど気を遣わなくてもよいのですが、管楽器のなかでも「死に指」のない唯一の楽器なので10本の指が目まぐるしく活躍することを要求されます。


コントラファゴット

ファゴットの2倍の管長を持ち、床にピンで立てて座って演奏します。管も3つに折れ曲がっておりファゴットの1オクターブ下をカバーし、豊かなオルガンのような響きを持っています。ラヴェルの「マ・メール・ロア」で印象的なソロがあります。

 大変重い楽器であり持ち運びにも細心の注意が必要であり、リードも高価で希少です。


クラリネット

 内側の空間は円筒形をしているため、円錐形のオーボエよりも温かな音色を得ることができます。シングルリードで発音する点はサキソフォンと同じです。1700年頃にドイツのデンナーが当時シャリュモーと呼ばれていた楽器を元に改良して現在の形に近いクラリネットができました。19世紀後半には本来フルートのために開発されたベーム式のキーと運指が採用され、格段に演奏しやすくなりました。クラリネットで有名な楽曲としては、大変好んで使ったモーツァルトのクラリネット五重奏曲やクラリネット協奏曲があります。ウェーバーの作品にも多くクラリネットの可能性を引き出したものがあります。吹奏楽で使われているのは主に変ロ管で、稀にイ管も使われます。ラヴェルなどはイ管の最低音を使うためこの管が必要になってきます。また、

 吹奏楽ではクラリネットが中心的な役割を演じることになる理由で最も決定的なものは、何と言ってもその広い音域と軽やかなフィンガリングにありますが、記譜のラやシは苦手とするところで、奏者が十分な息を入れる必要があります。


エスクラリネット

 変ロ管よりも完全四度高く変ホ管の造りを持つ楽器です。有名なソロに、ベルリオーズの幻想交響曲があり、緊迫した音色で独特のキャラクター性を発揮しています。

 吹奏楽ではクラリネットとフルートの音域の橋渡し役でもあり、最高音の補強としても重要な仕事をします。


アルトクラリネット

 変ロ管よりも完全五度低く変ホ管の造りを持つ楽器です。エスクラリネットの1オクターブ下の音域でもあります。演奏しやすいようにネックは少しカーブしており、金属製のベルを持っています。

 吹奏楽では中音を担当する楽器としてアルトサクソフォンと同じ音域を受け持ちます。アルトサキソフォンよりも低音までカバーでき、弱音時の効果は絶大です。そんな意味においても是非揃えたい楽器です。


バスクラリネット

 変ロ管の1オクターブ下の音域を担当します。低音はテナーサキソフォンよりも低くまで出すことができ、ファゴットと共に木管の低音を支えます。19世紀半ばにアドルフ・サックスによって考案されました。オーケストラではマーラーやワーグナーがしばしば使い、小山清茂の木挽歌でも印象的なソロを担当します。

 吹奏楽でも不可欠な楽器で、クラリネット・ファミリー独特の柔らかで温かな音色はとくに弱音で効果を発揮します。どの木管楽器でも言えることですが、組立時に回しながら接合させるとキーのジョイント部分が破損する恐れがあります。気を付けたいものです。


コントラバスクラリネット

 あまり見かけない楽器ですがコントラファゴットと共に是非揃えたい楽器です。テューバの1オクターブ下の音を担当し、それだけではあまり聴こえてこないのですがTUTTIで聴いてみるとサウンドの厚みが断然違ってきます。近頃取り入れている団体も増えてきているようですが、高価なものですから「次の機会に」といったところでしょうか。


ソプラノサクソフォン

 アドルフ・サックスによって考案されたサクソフォン・ファミリーの最高音域を担当し、変ロ管の楽器です。最近カーブドネックのモデルが人気があります。良く通る明るい音色はポップスのソロやオーボエの代替楽器としても活躍します。

 高音を担当する楽器に共通しますが、ピッチコントロールに悩まされる場合が多く、持ち替えで演奏するときには特に気を付けなければなりません。ともすれば全体に大きな影響を及ぼすので、良く練習されコントロールされた演奏が望まれます。


アルトサクソフォン

 アルトクラリネットと同じく変ホ管の造りを持つ楽器です。ポップスやジャズでは花形のソロ楽器です。

 吹奏楽でサクソフォンに求められるのは柔らかな音色と豊かな音量でしょう。従って唄口も厳選し、手荒な演奏では使い物にならないことになってしまわないように、丁寧で協調性のある演奏を心掛けたいものです。自己主張をするのは時と場合をわきまえて。


テナーサクソフォン

 ラヴェルのボレロではソプラノサクソフォンと持ち替えでのソロを担当し、サクソフォンの音域いっぱいの華麗な一面をクラシックの世界でも聴かせてくれます。スタンダードジャズの世界では最もハスキーで魅力たっぷりな音色を堪能することができます。

 吹奏楽では、えてして目立たぬ存在になりがちですが、その分はポップス曲で十分発散するのが一番でしょう。


バリトンサクソフォン

 元々サクソフォンは木管楽器の機動性と金管楽器のダイナミクスを兼ね備えた楽器として考案されましたが、この変ホ管の最低音を担当する楽器はサクソフォン・ファミリーノ重鎮と行った面持ちです。

 吹奏楽ではバスクラリネットやファゴットと共に低音を担当しますが、特にフォルテシモでの威力は他の追随を許しません。熟練した奏者の柔らかなピアニッシモも重要な一面です。なにぶん大きな楽器ゆえ、持ち運びのと起のアクシデントには十分注意したいものです。

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