打楽器群

叩いて音のなるものなら何でも打楽器と言えるでしょう。

 

 ティンパニが何と言ってもオーケストラでレギュラー・ポジションを持つ唯一の打楽器で、筆頭に価するでしょう。通常は4・5台の別々にチューニングされたセットで演奏し、現在ではペダルで簡単にピッチを変更できるものが主流になっています。16個のティンパニを使った作曲家としてベルリオーズが有名です。ハイドンの「太鼓連打」でも活躍する楽器ですが、チャイコフスキーのロメオとジュリエットでは心臓の鼓動を表現するのにティンパニが使われました。

 

 マレットと奏者によって響きがこれほど変わる打楽器は他にはないでしょう。マレットはいくつもの種類を用意しましょう。ロールは力に頼らずヘッド(革)とケトルが響くように研究し、本当に粒がはっきり必要な場所以外は、むやみに硬いマレットを多用するのはやめましょう。


 スネアドラム

スチールや木製の胴に強く張ったヘッドを木製のスティックで叩きます。下の革に張られた響き線(スネア)が振動し、特徴的な打音を出します。169回のリズム打ちで有名なラヴェルのボレロは圧巻ですが、二つ打ちのオープンロールが美しくできれば一人前だと言えるでしょう。


 バスドラムはマーチの中で強拍を打つ基本的なリズム楽器です。深く大きな木製の胴に牛革をはったものが理想的ですが、温度・湿度の管理が要求されます。ビーターを注意深く選んで、ヘッドのチューニングにも時間をかければ音というよりも空気自体を振動させるお腹に聞こえる響きが出せるのですが、プロでもなかなか上手くいかないもののようです。


 シロフォンは木製の音盤で黒檀製又はABS樹脂製マレットを使います。サン・サーンスの「死の舞踏」では墓場の骸骨の踊りの中で骨がぶつかり合う様をシロフォンで表現しています。


 マリンバは木製の音盤で糸巻きマレットを使います。通常は4オクターブ以上が必要で、温かで豊かな響きが得られます。吹奏楽では弦楽器のトレモロ奏法の効果を出すときに威力を発揮します。


 ヴィヴラフォンは鋼鉄製の音盤で糸巻きマレットを使います。モーターにより共鳴管を開閉させて、ヴィヴラートをかける働きがあります。ジャズのソロでは甘い響きに酔い知れることでしょう。吹奏楽ではハープの代替楽器としても効果的です。回転部分のゴムリングをなくさないように注意しましょう。


 グロッケンシュピールは鋼鉄製の音盤で真鍮製のマレットを使います。高く澄み切った音でオーケストラでもよく使われます。モーツァルトが歌劇「魔笛」でパパゲーノの魔法の鈴を表現するために使っています。


 トライアングルは鋼鉄製で様々な大きさがあります。曲によってビーターも数種類を使い分けましょう。


 タンブリンは打楽器の中でも最も古い楽器で、音楽にエスニックな要素を加える働きがあります。舞曲で使われることが多く、湿った親指で連続トリルをする奏法は常識ですが、ストラヴィンスキーの「ペトルシュカ」では人形の死を表現するためにタンブリンを床に落とすという奏法もあります。


 シンバルの中でも吹奏楽やオーケストラで使われるものは、複雑で高度な製法によって造られます。その合金は、17世紀初頭にイスタンブールで考案されました。シンバルも曲や場所によって使い分けの必要がありますが、通常は18インチのフレンチモデルが汎用性があります。ここ一番の強い音色が必要なときは20インチのジャーマンモデルがよいでしょう。但し重いので体力が必要です。


 ゴングは東洋に起源を持ち、非常に特徴的な重々しい音が得られます。またコインで擦ったり木製スティックで叩いても特殊な効果があります。


 チャイム(チューブラベル)は教会の鐘の効果を出すために使われる楽器で柔らかなハンマーで管の上部を叩きます。1オクターブ半のフルモデルはペダルでミューとすることができますが、1本ずつ買い揃えて吊るすこともできます。この楽器も大変重いので、運搬には注意が必要です。


 そのほかによく使われる楽器としてはウッドブロック(最近はプラスチック製もあり、よく抜けた音がする)や、カウベル、スレイベル、ウインドチャイムなどが挙げられます。ラテン楽器で活躍するものにはアゴゴ、カヴァサ、クウィーカー、ボンゴ、コンガ、ティンバレス、グィロ、マラカスなど枚挙にいといません。いづれにしても多彩なキャラクターを万遍なくこなす打楽器奏者に脱帽したいと思います。


チェレスタ

 1886年 フランスのオルガン製作者ミュステルによって考案され、製作されたデスクオルガン位の大きさで鋼鉄の音盤をハンマーで叩く鍵盤楽器です。1892年に初演奏されたチャイコフスキーの「くるみ割り人形」の中の「コンペイトウの踊り」で初めて使われた楽器で、可憐で美しい音色・優しくファンタジックな響きが印象的です。celesta=イタリア語で「天国的な」の意味。

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