秋の剣山単独幕営初体験-6

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標高1700mの夜

 夜の帳が下りて17時を過ぎてからのことだったか、俄に突風が吹き荒れ始めたのだ。先ほどまでの快晴に恵まれた美しい黄昏を回想する心の余裕は無くなっていた。夕食を明るいうちに済ませておいて良かった。また、テントのペグ打ちも通常のツーリングでキャンプする際には行わなかったが、今回は入念にペグを打っておいた。西風の直撃には耐えられないだろうが....。

 頂上越しの北西から吹き付ける風は荒々しさを増し、ガスが視界を遮る。おまけに秋を完全に通り越したような低気温である。恐らく摂氏5度くらいであろう。覚悟はしていたがテントが前後左右に激しく揺れ、風切音も加わって熟睡に入れない。日頃は聴いたこともない小型ラジオのイヤホンを耳に当てる。他愛もないトークの音楽番組が妙に楽しいのだが、まだ19時だ。

 中綿の重量が1kgのシュラフ(夏用は600g)を新調して臨んだのだが足下が冷えて眠れない。浅い眠りで、ふと気づいたら風の音は止み、静寂が周囲に満ちていた。寒さと向かい合いながら勇気を持ってテントのジッパーを開けた。外は満天の星が降っていたのだ。「明日も晴れだな」と自分自身をなだめながら21時に再度シュラフに潜り込んだ。

 朝方3時にも目が覚めた。またもや突風でテントが揺れている。ジャンバーを羽織るも寒さで外に出られるわけが無い。早く朝日が辺りを照らしてくれないかと、そればかり念じながらジャンバーのままシュラフにくるまってうたた寝をする。ようやくテントの天井が白み始めた。5時頃だったか、外の様子を伺ってみると、やはり濃いガスだ。頂上を越えて北東からやって来る雲が凄いスピードで頭上を流れていく。目論んでいた早朝ピークハントは仕方なく断念することとなった。

 ともかく朝が来て良かった。

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 一夜が明けて、再び光が戻ってきた。6時までは一面のガスで視界が5mといったところだったが、8時にはすっかり晴れて朝日が山にコントラストを刻み込んでいる。周囲の枯れたクマザサで火を起こし、レトルトのカレーライスを温めてお腹に流し込む。リフトが動き出す9時までにはゴミを一つも出さぬよう撤収完了。今日中に帰宅するため、昼には徳島を出港したい。


ようやくガスが晴れた


一番乗りでリフト下山


神山町にある道の駅で休息


12時15分のフェリーで徳島を離れた

 9時11分にリフト「見の越」駅を出発、11時20分に徳島港に到着した。フェリーターミナルで徳島ラーメンに興じる、今回の旅で初めての肉片(薄く小さなチャーシュー)に感動。往きのチケットを提示して1割引の3120円、一番乗りで12時15分発のフェリーに乗船できた。14時10分には和歌山港を出て国道24号線を一路自宅へ。17時には無事に帰宅できた。総走行距離428km、燃費は23.8km/リットルだった。

 今回のテーマでもある単独幕営と50リットルザックの試用で実感できた山の秋、厳しい中にこそ非日常の美学が存在するのだということを学んだ。大型ザックでの縦走には相応の体力を要することは間違いない。風や寒さ対策(使い捨てカイロなど)も重要である。雨対策や非常食など備えなければならない点も多く残った。来年春に向けて準備していきたい。

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