「リコーダーの広場」 先生方へ


 この曲集は従来の曲集とは違った意味で画期的なものです。その主な内容は、まずグレード制を基本に編集したことです。

 音楽の年間カリキュラムの中で器楽分野の時間が取れるのは限られています。その中で如何に効率良く生徒の意欲を引く出しつつ、自ら進んで演奏しようという姿勢を作り出すかが重要なキーポイントになってきています。早く次の曲がしたい、という気持にさせる素晴らしい曲集が手元にあり、自分の演奏した足跡がはっきり残ることが、次への意欲につながっていきます。

 先般の指導要領改訂からよく論じられるようになった「個を生かす教育」や単に画一的な教え込みの授業形態から体験や実習を通して自ら学ぶ姿勢を育てる授業を目指し、グループ学習を主体にしました。3人4人のグループで自分たちの好きな曲を選んで練習する中で教え合い、発見しながら力を伸ばしていきます。先生のご指導は各級ごとの新しい運指をどれか一つの曲で一斉指導していただければ、後は生徒達の主体性に任せて、曲の仕上がりを支援して戴き、「よくがんばったね」と評価してくださるだけで良いと思います。


 第2に、様々な価値観を認めるという教育観からも易しい曲は技術的な面からも、できるだけアーティキュレーションの表記を控えたことです。自分達で演奏していくうちにどこでタンギングやブレス・スラーをつけるかを任せるのも良いのではないでしょうか。余りにも不自然な演奏になる可能性は低いと思いますが、その時は適切な助言をして戴けると思います。


 第3に選曲のことです。統一性が無いとも言えるかも知れませんが、古今東西の名曲の中から特に親しみやすい曲を選びました。一生のうちに一度でいいから口ずさんで欲しいメロディーを集めることで運指さえ知っていればどの級からでも聞き覚えのあるメロディーが見つかるはずです。

 最後に編曲のことですが、限られた音域とフィンガリングの面を配慮しながらも豊かな和声を体験できるように書きました。派生音を使うことが許されるグレードでは、半音階的進行の楽しみも加え、多声音楽隆盛のバロック時代の名曲から我が国のわらべうたまで多彩な音楽シーンを生徒が再現してくれることでしょう。一年に一度の発表会で各グループの演奏発表に労いと感動の拍手を贈る生徒達の生き生きとした姿が目に浮かんできます。

 どうか先生の豊かな音楽体験の中から少しでも生徒達に分け与えて戴きたいと心から願っています。その時には、生徒個々の感性が磨かれていくと同時に、若々しく素晴らしい演奏がたくさん出来上がっていくことでしょう。

 

            瀬 浩明 

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