南宇治中学校吹奏楽部演奏曲解説

 南宇治中学校吹奏楽部が今までに演奏した曲の楽曲解説についてご案内致します。
コンサートに来てくださったお客様が興味を持たれて少し読まれることも嬉しいのですが
演奏者が楽曲を十分知り、深くまで表現をしようとする姿勢があってこそ指導者や指揮者の意図する世界が現実の音となって聴衆に感銘を与えるのだと思っています。
 プログラムの解説や、生徒達、楽団員の皆様の勉強に是非お役立てください。

皆さんにお願い

 もしこのようにお持ちのテキストがございましたら是非メールにて送ってください。提供してくださった方はお名前をご紹介して(匿名でもOK)掲載させていただきます。
 多くの方々が音楽を心から愛し、それをより深く知ることによって感動はさらに大きなものとなるでしょう。
 そのためにも共有の財産としてこれらのデータライブラリー、プログラムノートを皆さんとともに活用していきたいと願っています。
 「一度使ったら一つ出す」の精神でよろしくお願いいたします。


宇治市中学校吹奏楽部演奏曲解説

オリジナル曲

■エドワード・グレグソン

エドワード・グレグソンは、この国で最も多芸、多彩な作曲家の一人であり、劇場音楽、映画音楽、テレビ音楽と同様に合唱曲、室内楽、楽器、オーケストラなどを手がけています。また彼は、管楽器演奏者として国際的な評価を得、ホルン、チューバ、トランペット、トロンボーンでのコンサートでは、多くの国々に定評があります。彼は、国内外で、現代音楽の指揮者として活躍しています。ゴールドスミス大学やロンドン大学の音楽講師もつとめ、またロイヤルアカデミーの音楽学部の教授に師事しながら視野を広げています。

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■剣と王冠

1998年グレグソンは、ストラッドフォードオンエーボンにいるアドレン・ノベルの演出で「プランタジネット家の3部曲」を作曲するようにロイヤルシェークスピアカンパニーに頼まれました。これには、ヘンリーX世の死からリチャードV世の死までが綴ってあります。後に、1991年グレグソンは、再びストラットフォードでヘンリーY世パート1、パート2を作曲しました。そしてそれらは全部、力による権力闘争に関するもので、イングランド王国の歴史上、最も揺れていた時期が表現されています。1991年、ロイヤルエアーフォースミュージックサービスが、ロイヤルエアーフォースのバンドが集結してイギリスツアーを行うために、グレグソンに作曲を依頼しました。グレグソンは、すぐにこの曲をシンフォニックバンド向けの第3楽章からなる組曲に改編することを思いつきました。
この作品は、もともと壮大な光景を表す伴奏として劇場用に作曲されたものでしたが大編成用の交響的組曲に変えられたのです。それは大編成で演奏した時に最も効果的な演奏ができる作品となりました。

第1楽章

 ここでは、交互に2本のトランペットを用いた短いファンファーレで始まります。この後、レクイエム(ヘンリー5世の死)が流れてきます。レクイエムが終わると、イギリス軍のフランスへの大行進が始まります。最後に短いレクイエムの後、エドワード5世とリチャード3世の父であるヨーク公爵プランタジネット・リチャードの勝利を表現した音楽で終わります。

第2楽章

この楽章は、ヘンリー4世時代のウェールズ宮殿の音楽です。静かな調子で流れる音楽の合間には遠くから戦争の訪れを感じさせるファンファーレが聞こえてきます。その後、民族音楽が違った調子で3度流れ、アルトフルートと穏やかなパーカッションで第2楽章が終わります。

第3楽章

最終楽章は、2つずつ交互に置かれたティンパニー、ドラム、タムタムで始まります。それは、「戦争で使う武器」と戦いの悲惨さを表現しています。トランペットのファンファーレとホルンの音で英雄的戦いを表す音楽が展開していきます。それは、楽章の終わりまで続き、最後にヘンリー4世に勝利を収めた賛歌に変わり、高らかに鳴り響く総奏で華やかに曲が終わります。

■インペラトリクス

吹奏楽のための演奏会序曲「インペラトリクス」はジョージア州フォレスト・パークのG.P.バブ中学校バンドとその指揮者ドナルド・E・ウィルクスの依頼により作曲され捧げられました。
この作品は1972年のはじめに作曲され、同年4月7日、ウィルクスの指揮の下にバブ中学校シンフォニック・バンドが、ジョージア州音楽教育者協会の全州中学校バンドと管弦楽の合奏に出演し  たとき初演されました。
音楽はいくつかのセクションからなる形式で書かれ、この作品を組立てているすべての主題的な材料が示される幅広い序奏からはじめられます。これにつづいて金菅のファンファーレ風な音型で輝かしいアレグロがはじまり、伝統的な和声によらない、はげしく動く発展部がつづき、第三の部分に入るまえで静まります。この第三の対象的なエ  ピソードの部分はクラリネット、バリトンそれにテューバによる豊  かで、あたたかくそして静かな伴奏をともなって、フルート全員によってユニゾンで歌われる長く、抒情的な旋律線で構成されています。
曲を閉じるセクションははじめと同様なアレグロに再びもどり、今度はすべての主題がバンドの最も輝かしい色彩で再現されるコーダに入ります。作曲は喜ばしげで勝利に歓喜した結びで終わります。インペラトリクスとは“古代の皇后”の意味です。

■トリティコ

 作曲者ネリベルは1919年チェコスロバキアに生まれ、プラハ音楽院で作曲と指揮を、スイスのフライスブルグ大学で音楽学を学びました。プラハ、ジュネーブ、ミュンヘン等のオーケストラの指揮者をつとめ、1950年から7年間自由ヨーロッパ放送の音楽監督をした後、アメリカに移住し、現在市民権を得てニューヨークに住み、作曲やゲスト指揮に活躍しています。

 「トリティコ」は1963年に作曲され、ミシガン大学シンフォニーバンドと同バンド監督のウィリアム.D.レヴェリ博士に献呈、翌年、同博士とバンドによって初演されました。

第1・第3楽章はいくつかの点において関連が深いと言えます。まず、この両楽章はともに輝かしく、動的で、エネルギッシュな曲想になっています。また、第1楽章の主題が第3楽章の最高点で再現されます。さらに、各楽器の使用方法も両楽章は全く同じです。

第2楽章はそれとは対照的で、荒々しく且つ表情豊かな木管のソロが大変印象的です。トランペットなどは楽章の最後に激烈なフレーズをわずかに演奏するだけになっています。また、第2ティンパニやピアノ、チェレスタなどが使用され、打楽器が大変強調されています。

■マーチKz 

 87年に金沢市市民芸術祭の10周年記念として金沢市の委嘱を受けて作曲されました。タイトルの”Kz”は金沢の意味と、この曲のイメージを呼び起こしてくれた人に由来しています。曲は、重々しいフアンフアーレでスタートし、次第にエネルギーを増していきます。トリオからのメロデイは、深く、格調高く響きます。このようにこの曲は、金沢の持つ格調高さと、静かではあるが確かに感じられるこの街の持つエネルギーを表現しています。 

■スプリングマーチ

 平成7年度吹奏楽コンクールの課題曲でもあったこの曲は、題名のとおり「春(Spring)」のイメージの曲です。

 春の暖かさ、穏やかさ、そしてSpringの持つ別の意味の始まりや跳躍もイメージしてみて下さい。軽快なメロディーは演奏をしていても聞いていても心が弾んできそうです。夢や希望いっぱいの4月からの生活を思い浮かべながらお聞き下さい。

■シーゲート序曲

 今や日本のスクールバンドで最も演奏される機会の多い作曲家、J.スゥエアリンジェンは1947年アメリカに生まれ、ボーリング・グリーン州立大学とオハイオ州立大学に学び、現在オハイオ州コロンバス郊外のグローブ・シティーに住んでいます。作曲活動のかたわら、同氏の高校バンドディレクターをつとめ後進の指導に当りながらも、たくさんのバンド曲を作曲し愛されています。

 この曲は1988年度のオハイオ州音楽教育協会総会の席上で初演されました。オハイオ州トレド市で1年ごとに開催されるこの会議は、トレド市が海への入り口として知られていることからシーゲート会議と命名されています。この曲のタイトルはこれにちなんで付けられたものです。フルートとクラリネットによる掛け合いの短い序奏の後、シンコペーションを利かせた軽快なアレグロが展開します。途中に変拍子が加わって変化に富んだ構成になっています。中間部のアンダンテを伴って再び後半のアレグロに入ります。

■海を越える握手

 この曲は1990年に、スーザ吹奏楽団が第1回ヨーロッパ演奏旅行の時に作曲したと伝えられていますが、実際は国際間の友情を讃えた曲です。1898年フィリピンの独立戦争を助けるため、アメリカがスペインと戦いました。その時苦戦していたマニラ湾のアメリカ海軍デューイ提督に、イギリス海軍チェスター艦長が救いの手を差し伸べました。

 スーザはその友情を讃えて翌1899年に作曲したといわれています。スーザは「変わらぬ友情を誓いあおう」というサブタイトルを思い浮かべて作ったといわれ、初版の表紙にそれが印刷されています。現在は海外との親善の印に演奏されることが多く、先年、天皇陛下がアメリカを訪問されたとき、ワシントンの閲兵に際して、この曲が演奏されました。今日演奏する編曲は東京佼成ウインドオーケストラの指揮者で打楽器奏者でもあるフレデリック・フェネルによるもので、打楽器を効果的に使用したものになっています。

 

■メキシコの祭り La Fiesta Mexicana

オーエン・リード OwenReed

 リードは約5ケ月メキシコに滞在し、その間クエルナヴァカ(メキシコ・シティの南約50キロの所にある高原の町、カカワミルバの洞窟がある、観光・保養地)に2ケ月、チャペラ(ハリスコ州グアダラハラの南の湖の町)に2ケ月住み、残り1ケ月はメキシコ・シティやアカプルコ寺を旅行してまわった。その間に集めた民謡や舞曲がこの曲の各楽章のテーマとして用いられる。第一楽章に用いられている“エルトロ”はメキシコの闘牛場でよく演奏される曲で、同じ楽章の“アズテッグ・ダンスはグアダラハラ地方の舞曲である。また第二楽章“ミサ”で用いられている聖歌ぱ、グレゴリア聖歌の“リベル・ウサリス”でチャパラ地方の教会でよくきかれる曲であり、第三楽章の中頃に現れる民謡“ラ・ネグラ”はバリスコ地方(中西部の州で人平洋岸に面し、大部分が山地でその州部グアダラハラはマリアッチの中心地で、地酒一ティキィェラ一も有名)のマリアッチ音楽として有名な曲てある。

 さてこの曲は“メキシカン・フォーク・ソング・シンフォニー”というサプ・タイトルを持ち、正式には“ラ・フィエスタ・メヒカーナ”という曲名で、三つの楽章からできていて、作曲者はそれぞれの楽章について次のよつなプロブラム・ノートを書いている。

「第一楽章前奏曲とアズテック舞曲

真夜中に教会の鐘が祭の開始を告げる。静かな雰囲気は花火の爆音と教会の中庭に民衆を集めるファンファーレの高鳴りによって破られる。ティキィェラとブルクエのふるまい酒が眠けをはらい、人々を陽気な馬鹿さわぎに誘う。深山の鐘のひびきと花火の音は早朝の眠けを覚まし、まもなくバンドが遠くで闘牛場の歌“エル・トロ”を演奏しているのがきこえる。それから作者がメキシコ政府編集の「土着民の音楽」から見つけた、グアダラハラ地方を色彩豊かな羽根かざりをつけ、仮面をかぶった踊り手達によって踊られるアズテック舞曲の強烈なメロディーが聞こえてくる。

第二楽章 ミサ

この楽章もまた,教会の鐘のひびきではじめられるが、ここでは人々が過去1年間を感謝し、これからの1年間の希望を祈る、祭りの中でも最も静かで厳粛なミサを暗示するため違った響きをもっている。

フォルテの序奏のあと、チャパラの教会てしぱしば歌われるグレゴリア聖歌の1つ“リベン・ウサリス(Liber Usalis)”からとられた古い聖歌のレシタティーブがきかれ、人々が1人づつ教会に入って来て、やがて聖堂をいっぱいにしてゆくようにアンサンブルが高まる。そしてまた静かに曲が閉じられる。

第三楽章 カーニヴァル

ここではムードは再び溢れるぱかりの叫び声、サーvスの楽隊のファンファーレ、闘牛場のさわぎ、市場のざわめさ、それに町中至るところからきこえてくる市民パンドのひびきで陽気に沸きかえる。マリアッチ・パンドの演奏するハリスコ地方のラ・ネグラの泡だつような歌がにぎやかにきこえ、以前の楽章で紹介された主題か次々にあらわれて、陽気て活気にみちたクライマックスを迎える。」

音楽は全くこの解説の通りで、他に何の説明の必要もない。1950年代を代表する優れた吹奏楽曲であり、吹奏楽のための交響曲のひとつである。 

■ムーアサイド組曲/G.ホルスト

ホルストは、イギリスの20世紀の吹奏楽のオリジナル曲の重要な作曲家で、特に組曲第1番、第2番は有名です。このムーアサイド組曲は、1928年イギリスのブラス・バンド(金管合奏)の全国コンクールの課題曲として作曲された曲です。それをデニス・ライト博士が、木管を含めた吹奏楽曲として編曲し、BBC放送の図書館に放置されてあっ たのが最近発見され、1983年秋に出版されました。曲のタイトルは特定のものでなく“限りなく広い空間、自由、憧れ”といっ た意味をもつもので、スケルツォ、ノクターン、マーチの3つの楽章からできています。“スケルツォ”は6/8拍子で序奏なしに親しみやすい旋律で歌い はじめられ伴奏部に というリズムがいろいろな楽器であらわれる特徴ある曲です。第2楽 章のノクターンはオーボーとクラリネットの美しいメロディーによって開始され、木管やユーフォニアムがからまり、中間部ではコラール風な部分もあって 幅広いクレッシェンドをきかせます。第3楽章のマーチは正にホルストの典型 的なマーチで、素晴らしい緊張感と豊かさをあわせ持っています。吹奏楽の貴重なレパートリーとなる曲です。

■ 祈りとトッカータ /J.バーンズ

バーンズ(1949〜)の曲の中でも最も有名な作品となっているこの曲はニュー・メキシコ州立大学の委嘱により1981年に作曲されました。曲は、5/4拍子の重々しい《祈り》によって劇的に始まります。それはティンパニと金管低音の力強いメロディーに始まる途中オーボエ・ユーフォニウムのソロが入り、3/4拍子の《トッカータ》に入ります。ここでは打楽器群がリズミカルに入り、木管が受け継ぐ速い部分で、後に金管も加わり、7/8、5/8拍子等の変拍子と共に盛り上がりクライマックスに入ります。ここは低音と打楽器が同じリズムを繰り返す中、木管とトランペットは指定された数個の音を自由に演奏します。そして指揮者の合図で金管中低音の重々しいメロディーが流れ、冒頭の《祈り》 の主題が再現されます。最後はアレグロ・ヴィヴァーチェの7小節のコーダで一 気に終結となる、ドラマティックな曲です。

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