春の梅小路公園

― 身近なレトロ―

 近くにあって足を運ぶ機会がなかった梅小路公園を訪れた。梅小路公園(うめこうじこうえん)は、JR東海道本線・地下鉄烏丸線・近鉄京都線:京都駅から西に約15分に位置する公園である。1995年4月29日、日本貨物鉄道(JR貨物)梅小路駅の跡地に開園した京都市営の総合公園なのだ。

 芝生広場、中央広場、いのちの森、朱雀の庭、緑の館などの施設のほか京都市電の保存展示もされている。面積117,133m2の広大な敷地が各種行事にも利用され、梅小路蒸気機関車館が隣接している。

 雲に覆われた5月6日、連休最後の昼下がり、七条入口にバイクを停めて入った。まず最初に目に飛び込んできたのは昔懐かしのチンチン電車だ。ふれあい広場と西口の駐車場入口の間を往復している。土日祝日運行していて、乗車1回300円。「緑の館」(レストランと日本庭園)前を通り、芝生広場に出た。

 芝生広場ではお弁当を広げたり、スポーツに興じる市民の姿がいつも絶えない。筆者は大宮通の高架を通過しながら、この長閑な風景を何度も羨んだものである。 蒸気機関車館の反対側にはアスレチック遊具が配置されたふれあい広場もあり子供たちの歓声が響いている。

  芝生広場の南側に見える東海道線を走る電車を眺めていると、 蒸気機関車8630号(8620型)がバックで東進してきた。梅小路蒸気機関車館では特設線路で往復運転をしており、乗車券を購入してトロッコ列車に乗ることができる。そのSLスチーム号を牽引運転しているのだ。短距離の走行ながら、SLの音、汽笛、煙の匂いを満喫できる。

 8620形(愛称「ハチロク」)は、日本国有鉄道(国鉄)前身である鉄道院が製造し、日本で初めて本格的に量産された国産旅客列車牽引用テンダー式蒸気機関車だ。国鉄蒸気機関車の末期まで全国で活躍した。 動態保存機は、ここ梅小路蒸気機関車館に保存されている8630(無車籍)と、JR九州の58654の2両のみ。

 何とも懐かしい風景に出会ったものだ。 筆者が梅小路公園周辺を通行する時、よく聞こえていたのがこの警笛の音だった。これを目の前にしたのは今回が初めてだった。市民の憩いの場であり、昭和レトロを身近に感じられるスポットがここにあったことを遅まきながら再認識した。昭和40年代のSL末期、奈良線を走り、ディーゼル機関車に取って変わられていくSLを、筆者も惜しみなが眺めていたものだった。

 よく見れば大宮通の高架下にも入口がある。 SLの動態保存が末長く続くことを祈りながら、またカメラ片手に訪問してみたいと思った。


チンチン電車
チンチン電車

チンチン電車
往復運転の発車前

梅小路機関車館
蒸気機関車館

つつじ
芝生広場はつつじが満開

機関車
東海道線横に並んだ8630 (8620型)動態保存車両

スチーム機関車
渾身の警笛とスチームを吐き出す

発車
筆者もスチームまみれ


走り去る雄姿

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