伝統芸能に触れる

―室町からの喜劇―

 我が国の伝統芸能について次世代に語り継ぐ責任を感じるこの頃。かつての室町幕府の「花の御所」の近く(現在の京都御所の西向かい)金剛能楽堂を訪れた。

百三十余年の星霜を経た室町の旧金剛能楽堂より、先人の思いが詰まった能舞台をそのまま移築。21世紀の能楽堂の中に19世紀の舞台が融合する空間だ。 座席数は定席が420席、補助席80席、ここで狂言を鑑賞したのだ。

エントランス左側に位置する庭園

 エントランス中央から能楽堂へ

堂内2階席からの眺め

1階席からの眺め

演目は茂山家による狂言『柿山伏』と『附子(ぶす)』

【能と狂言】

 能と狂言は室町時代に大変隆盛し、現代まで伝わっている。 京の都を中心として、将軍や諸国大名らが舞台を作り、能、狂言師たちを抱えて能会を開いて楽しんだ。
 能は、シテ役と呼ばれる主役やワキ役たちが謡い、「地謡い」と呼ばれる 合唱、笛・鼓・太鼓の囃子グループにより構成されている、我が国流のミュージカル(歌舞劇)とも言える。主に悲劇が多く、もの悲しく幽玄の世界を作りあげている。 能の会は、一曲1時間ほどの能を3〜4曲演じる事が多く、その能と能の間に狂言を演じた。これが能狂言。
 能とは対照的に、能狂言は囃子や謡いを使用することが少ない対話劇だ。 演目は落語などと同様に、喜劇の原点ともいえる内容が多い。能と同じくプロの家系が多く、野村家、茂山家、和泉家、大蔵家などが有名。 

【柿山伏あらすじ】

 出羽羽黒山の山伏が帰国の途中、道端に柿の木がなっているのを見つけて、柿を食べ始める。それを畑主が見つけて腹を立て、木陰に隠れた山伏をなぶってやろうと、カラス、猿、鳶に見立てる。
 山伏はバレないように鳴きまねをするが、畑主は鳶は飛ぶものだ、と囃したてるので、山伏はつられて高い木の上から飛び降り怪我を負う。
 怒った山伏は法力で畑主の体をすくませ、腰の治療をするように命じますが、畑主は背負った山伏を振り落として逃げ去る。

【附子(ぶす)あらすじ】

 用事で出かける主人が、太郎冠者と次郎冠者を呼び出し留守番を言いつける。主人は桶を指し示して、この中には附子という猛毒があるから注意せよ、と言い置いて出かける。
 二人は怖いもの見たさで桶のふたを取ってみると、中に入ってたのは砂糖、二人で桶を取り合って皆食べてしまう。その言い訳のため主人が大切にしていた掛軸を破り、台天目を打ち割る。
 やがて主人が帰宅すると二人揃って泣き出し「留守中に居眠りをせぬように相撲をとっているうちに、大切な品々を壊してしまい、死んでお詫びをしようと猛毒の附子を食べたが死ねない」と言い訳をする。主人は怒り、逃げる二人を追う。

金剛能楽堂

〒602-0912京都市上京区烏丸通一条下ル
TEL(075)441-7222
FAX(075)451-1008
休館日/月曜日

 楽しみながら我が国の伝統文化に触れたひとときであった。(2007年10月21日)

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